会長の時間

日出ＲＣ会長　加賀山茂

はじめに

　今年度は，会長の時間として，第1回目に「四つのテスト」の意味，第2回目に「ロータリーの目的」の意味，第3回に「五大奉仕部門」について，いずれも，本年度のRI会長（Holger Knaack氏）のテーマである「ロータリーは機会の扉を開く」を活用させていただき，3つの扉の色に即して，赤い扉は，「親睦（和らぎ睦び）」として，黄色の扉は，「職業倫理の向上」として，青の扉は，「次世代への奉仕活動の実践」として整理させていただきました。
　今回は，四つのテストのうち，第2番目に位置するものの，比較的に理解が困難な「みんなに公平（公正）か」について，タクシーに相乗りした場合に料金を割り勘にする場合を例にとって，平等，比例配分，公平な配分の違いについて考えてみたいと思います。

　1. タクシーの相乗りの事例

　栗野盛光『ゲーム理論とマッチング』日経文庫（2019/10/15）で取り上げられている事例を使って，説明したいと思います。
　一郎，二郎，三郎の3人が飲み会の帰りに，終電がなくなり，居酒屋からタクシーで帰ることにしました（前掲書78頁の図表3-1参照）。







　三人の自宅は居酒屋から，それぞれ，一郎は5km先に，二郎の自宅は10km先に，三郎の自宅は15km先にあります。
　この場合のタクシー料金は，初乗り料金が500円，そして1kmごとに100円の追加料金が発生すると仮定しています。

　■　一郎が一人でタクシーで帰った場合の料金は，500円+100円× 5=1,000円です。
　■　二郎が一人でタクシーで帰った場合の料金は，500円+100円×10=1,500円です。
　■　三郎が一人でタクシーで帰った場合の料金は，500円+100円×15=2,000円です。

　本来なら，3人で合計すると4,500円の費用が掛かるところを，相乗りすれば，2,000円の費用で済むのですから，2,500円の節約になります。
　問題は，「相乗りによって生じた2,000円の費用を三人でどのようにして負担し合うか」です。

　(1) 平等主義
　第1の考え方は，単純な平等主義です。三人で相乗りして，合計2,000円の料金が発生したのだから，以下のように，3人が均等に負担するという考え方です。
　
　■　一郎の負担，2,000/3 = 666.6円です。
　■　二郎の負担，2,000/3 = 666.6円です。
　■　三郎の負担，2,000/3 = 666.6円です。

　最初に降りた少しの間しか乗っていない一郎と最後に降りて，長い時間乗っていた三郎が同じ金額というのでは，「悪平等」で「不公平」だということになります。
　この結果は「みんなに公平か？」と問われれば，「公平でない」といわざるをえません。

(2) 比例配分主義
　第2の考え方は，相乗りによって生じる費用である2,000円を，それぞれの乗車した距離によって比例配分するというものです。
　一郎と二郎と三郎の乗車距離の比は，5km：10 km：15km =1：2：3なので，それぞれの負担は以下のように計算されます。
　
　■　一郎：2,000円×1/6＝333円（一人乗りなら1,000円）（三人乗りなら333円）
　■　二郎：2,000円×2/6＝667円（一人乗りなら1,500円）（二人乗りなら750円）
　■　三郎：2,000円×3/6＝1,000円（一人乗りなら2,000円）
　
　これこそ，「みんなに公平」のように思われますが，本当にそうでしょうか？
　2,000円を均等に負担すると，667円となるので，二郎は，まさに割り勘の恩恵をうまく受けているように見えます。しかし，二郎は，一郎が一人で乗っている分まで負担させられており，その分，三郎は，負担が軽くなり過ぎています。
　すなわち，この比例配分の考え方は，厳密には，「みんなに公平（公正）」にはなっていません。しかも，最後に乗った人の料金が確定してからしか，各人の負担金額を計算することができないため，後日に精算するしか方法がなく，少しばかり不便な方法です。
　
　

(3) 公平主義－協力ゲーム理論（限界貢献度）の応用
　第3の考え方は，最初は三人乗り，次は二人乗り，最後は一人乗りと考えて負担し合うというものです。
　居酒屋から一郎の自宅までの5kmは，3人で相乗りしているので，その費用（1,000円）は，3人で平等に負担します。次の5kmは，二郎と三郎が二人で相乗りしているので，その費用（1,500円-（一郎の負担分））は，2人で負担します。最後の5kmは，三郎が一人で乗っているので，その費用（2,000-（一郎の負担分+二郎の負担分））は，一人で負担すると考えます。
　そうすると，それぞれの負担は以下のように計算されます。
　
　■　一郎：一郎が降りるときのタクシー・メーターを見て，（1,000/3）=333円
　■　二郎：二郎が降りるときのタクシー・メーターを見て，（1,500-333）/2=583円
　■　三郎：三郎が降りるときのタクシー・メーターを見て，（2000-333-583円）=1,084円
　
　

　この計算は，協力ゲーム理論の限界貢献度に基づくシャプレイ値を使った計算（栗野盛光『ゲーム理論とマッチング』日経文庫（2019/10/15）92頁）とほぼ同じ答えを得ることができます。
　直感的にも，それぞれが一人でタクシーに乗った場合の3分の1から2分の1の費用を負担しているので，第3案の計算結果もシャプレイ値を使った計算方法も，みんなに公平であることがわかります。
　さらに，この計算方法は，第2の比例配分計算方式が，最後まで乗ったメンバーがいくら払ったかを知ってからしか，他のメンバーの負担金額を計算することができず，後日精算となるのに比較して，即時精算ができる点で実用的でもあります。
　なぜなら，第3の協力ゲーム理論による計算方式による場合は，タクシーを降りる人が，その都度，タクシー・メーターの金額を見て，前に降りた人の分を引き算した後，乗車していた人数で割った金額を，最後に乗る人に支払っていくことで，即時決済が可能となる（後日の精算は不要となる）からです。
　以上で，均等割りという悪平等主義，比例配分という平等主義，協力ゲーム理論による公平主義の違いを理解していただけたことと思います。

　ゲーム理論とマッチングは，これからのシェアリング社会を考えていく上で，非常に重要な考え方ですので，「貢献度の計算」に興味を持たれた方は，最初に紹介した栗野盛光『ゲーム理論とマッチング』日経文庫（2019/10/15）をぜひお読みください。

幹事報告

本日の予定

• 外来卓話　早水琢也様『ロータリーの公共イメージ「世界を変える行動人」について』

本日のゲスト

• 早水琢也様（２７２０ＪａｐａｎＯ．Ｋ．ロータリーＥクラブ、地区公共イメージ部門長）

次週の予定

• ８月２２日（土）早朝例会　朝７時～　大神漁港

今後の予定

• ８月２５日（火）例会変更（８月２２日（土））
• ９月　１日（火）休会
• ９月　８日（火）外来卓話　杵築日出警察署長
• ９月１５日（火）会員卓話　奥村元一会員
• ９月２２日（火）休会
• ９月２９日（火）外来卓話　日出町教育委員

今週の配布物

• 週報（第１６９４回分）
• ハイライトよねやま　２４５

今週の回覧物

• 別府東ＲＣより『硯川昭一ガバナー公式訪問　集合写真』
• 地区事務所より『２０２１―２２年度青少年交換学生・募集案内について（募集要項）』

お知らせ

• 別府近隣７ＲＣ親睦ソフトボール大会監督会議
  　日時：８月２１日（金）午後２時～　両築別邸
  　出席：上野公則会員、田村　悟会員
• 別府近隣７ＲＣ親睦ソフトボール大会
  　日時：１０月１７日（土）野口原グラウンド

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例会変更

宇佐RC	8月20日（木）の例会は『宇佐八幡RCとの合同例会』の為、『同日19:00～米沢観光園』へ変更します
湯布院RC	8月25日（火）の例会は『早朝例会』の為、『06:30～場所未定』へ変更します
別府東RC	8月27日（木）の例会は『夜例会（予定）』の為、『場所未定』へ変更します
別府RC	8月28日（金）の例会は『クラブ全員協議会』の為、『18:30～両築別邸』へ変更します

ニコボックス

加賀山茂会長（Ｔ）：

第3回 「法と経営学会」入会案内・設立大会のお知らせ 　私は，2017年3月に明治学院大学法学部を定年退職して，名古屋大学と明治学院大学の名誉教授となりましたが，明治学院を退職する2年前に，「法と経営学研究科」というマスターコース（修士課程）の大学院の立ち上げに関わり，初代委員長としてその研究科の発展に貢献してきました。 　その後も，『法と経営研究』という雑誌の責任編集者として，雑誌の編集に携わりつつ，新しい学会を創設するために尽力して参りました。 　その甲斐があって，今年の6月に，一般社団法人「法と経営学会」が設立することができて，私がその代表に選出されました。そして，11月29日（日）に設立大会を開催することになりました。 　現在，回覧させていただいている資料が，法と経営学会入会案内と設立大会開催案内です。興味のある方は，この学会に入会していただき，設立大会に参加していただけると幸いです。なお，この設立大会はオンライン開催を予定しております。 　今回も，トリプルでお願いします。

早水琢也様（Ｗ）：「『世界を変える行動人』キャンペーンを活用していただくことを願ってダブルでお願いします。」